最高裁判所第二小法廷 昭和25年(れ)341号 判決 1950年7月14日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人中川十一郎の上告趣意第一点について。
かりに、裁判所が検事の意見に反して、その求刑よりも重い刑を言渡したとしても、(本件第一審においては、検事は懲役一年を求刑しているけれども第二審においては、検事は懲役二年を求刑し、裁判所は同一年六月を宣告している。)それをもって、所論のように憲法第三六条又は同第三七条に反するものとすることのできないことは、当裁判所屡次の判例の趣旨に徴して明らかである。(昭和二二年(れ)第三二三号、同二三年六月二三日大法廷判決、昭和二二年(れ)第一七一号、同二三年五月五日大法廷判決参照)
同第二点について。
所論弁護人大熊代次は、適法な召喚を受けながら、原審第四回公判に出頭しなかったのであるが、その不出頭について正当の理由のあったことは記録上窺われない。しかして、同公判において、裁判長は、次回期日(第五回)を一一月二九日午前一〇時に指定告知し訴訟関係人に出頭を命じたことは原審公判調書上明らかである。(同公判において所論のような弁論再開の事実のなかったことは、また記録上明らかである。)従って、所論第五回公判期日は適法に弁護人大熊代次に告知召喚されたものといわなければならない。(昭和二三年れ第一六八一号、同二四年三月二六日第二小法廷判決参照)従って原判決に所論のような違法はない。
弁護人辻村精一郎の上告趣意第一点について。
原判決挙示の証拠によれば、被告人が松林泰と共謀の上、判示のごとく金三〇万円余りを費消横領した事実を認めることができる。所論は原審の裁量に属する証拠の判断、事実の認定を非難するものであって、上告の適法な理由とならない。
同第二点について。
原審の量刑不当を主張する論旨は、また、適法な上告の理由とすることはできない。
よって、刑訴施行法第二条、旧刑訴第四四六条に従い主文のとおり判決する。
右は全裁判官の一致した意見である。
(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)